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2003年ソニー教育財団 幼児教育支援優秀賞受賞

優秀プロジェクト園 主題「科学する心を育てる」
幼児の未来を拓く幼稚園教育 -幼児への科学の夢を育てる-

2001年度に引き続き、ソニー賞を連続受賞しました。第1回(2002年度)のソニー幼児教育支援プログラムに優秀プロジェクト園に選定されました。以下は受賞したプログラムの論文の要約です。
受賞の内容について2003年10月ソニー教育財団と共同で「科学する心を育てる」をテーマに公開研究大会を当園で開催しました。当日は公開保育、実践発表、シンポジウムそして記念講演が行われ県内はもとより東京、札幌などから多数の幼稚園・保育園・小学校の先生方が参加され、有意義な研究会となりました。

実践発表会の様子はソニー教育財団のサイトで公開されています。

1.はじめに

当園では45年の歴史の上に「幼児の未来を拓く」新しい幼稚園教育の創造に取り組み、その一つが「幼児の科学への夢を育てる」で、試行錯誤をものともせずに継続しています。
昨年の3学期、2月の半ばのこと、園では5歳児のために科学のマジックがあった日
「今日うちの子が玄関から大声で、お母さん、紫のキャベツとレモンをちょうだい、それから卵と塩も.....はやく、はやくと叫びながら飛び込んできました。そして急いで実験、ドキドキ、ワクワクして、食塩水が濃くなっていき、とうとう卵が浮きました。やったあ、うれしい!と飛び上がって喜びました」
これに似た手紙が何通も母親達から寄せられました。この研究を始めてから6年目のことです。この例のように幼児期における自然への感動や好奇心は、必ず今後の科学的探究活動のエネルギーとなる。このエネルギーなくしては真の探求活動も不可能であり、ましてや科学の好きな子は育たないという考えの基にさまざまな試みを重ね、ようやく園としてのまとまりが形成されました。

2.幼児の科学への夢を育てる実践研究

(1)園内外の自然環境の整備と活用

当園の在る秋田市横森地区はかつては広い田園、小高い丘陵ありの恵まれた自然環境でしたが、急速な宅地化により近くの森の公園のみとなりました。幸い広い園庭を持っているので、下記のような整備活動をはかると共に、少し足を延ばし、計画的な園外保育を行っています。

園庭・園舎内観察施設での自然体験

ア)園庭の樹木
・四季折々に花を咲かせる花木類
・実のなる木・・・中でもナツメ、アケビの人気が高い。
・秋に美しく紅葉する木、冬でも落葉しない木
イ)花や野菜の栽培
園庭の花壇や鉢植えの他、近所の農家の畑を借りジャガイモ(5歳児)大根(4歳児)を植え収穫を楽しむ。花壇に植えた落花生が地中に実をつけたのにはびっくり。
ウ)金魚とめだかの池、水草の池
金魚の稚魚がたくさん生まれ、黒い体がだんだん赤くなっていくのにびっくり。いつの間にか蛙がやってきたり今年は糸とんぼが羽化しました。
エ)うさぎとちゃぼの家
十数年前からの家族、うさぎを抱いて心臓の鼓動にびっくり。ちゃぼの卵が暖かいのにびっくり。
オ)おたまじゃくしの飼育
春の小川でかえるの卵を採集、クラスで小蛙まで飼育してから小川にかえしてやります。
カ)虫たちのくに
園庭の一角に設けた自然のままの野草園に3年目から虫たちがやってきて、今年秋かまきりの卵を見つけました。
キ)生きものの碑
虫たちのくにの近くに去年8月「あそんでくれてありがとう、死なせてしまってごめんね」碑文の供養碑が立派に出来ました。虫の遺骸を葬り手を合わせる子をよく見かけました。
ク)水遊びの水路
6~7月頃に組み立て式水路が中庭に設置され、笹舟流しや水車回しで大いに賑わいました。
ケ)園内のおもしろ施設
主に物象的分野の不思議体験をさせる手作り施設、へんてこ鏡・まほうの鏡・やまびこくん・潜望鏡等。

園外での自然体験

(2)子供の感性をゆさぶる科学遊び

当園では上記の多様な施設で、子供が自由に好きな遊びの中で自然体験が行われる一方で、明確な意図と計画によって行われる課題遊びの時間が特設されて います。
前者の自由な自然体験の長所は言うまでもありませんが、それは偶然的、断片的であります。これに対し課題遊びは意図的計画的で、どの子にも体験の機会が保障されると共に、将来の科学的活動の先行的体験を与えるものとして計画されました。平成8年秋、科学の夢を育てる委員会からこの案が発表されたときは、さすがに驚きと不安の声が上がりましたが、実践してみて子供たちの目は輝き、随所に歓声が上がるという結果に自信をもち、実践しては反省改善を加え今日に到りました。

科学遊びの実践研究

ア)科学遊び年間題材表(第3次)
平成14年度科学遊び年間題材表
イ)指導手続きの作成と題材研究
計画の実践に当たり、現場の強い要望に沿って、上記委員会では各題材ごとの指導手引きを作成し、毎月の後半に翌月の題材について解説と必要な実技講習を行っています。
ウ)指導法の研究
上記の研修を径て、各年齢別部会で指導案作成→部会内で相互に保育研究→全国保育研究というシステムで研究が手堅く行われています。特に、部会内で相互に指導のリレー式研修を採用したことにより指導技術の向上と共に、部会の協力関係にも好影響を生じ、すっかり定着し効果をあげています。

(3)博士のマジック(科学のおやつ)

これは前期委員達(かつての理科教育OB)を講師に主に年長児を対象に行われる科学の不思議現象の演示で、子供達極めて高い人気を集めています。学期1~2回程度行われ、家庭へのアンケートや特には父母対象の講習会も最近行っております。
子供が主体的にやることは極めて重要です。しかし、まかせっきりでは育つものも育たずにいることが多い。一見受動的と見られるこの種のものも、子供の能動性を誘発する内容と方法により質の高い主体活動に転換されるという事実に基いて継続しています。

3.平成15年度の予定プログラム

(1)プログラムの骨子

(2)実地計画

ア)科学遊び題材の改定
現行の科学遊びの各題材について、教師の科学的教養や操作手順に問題はなかったか謙虚な反省に立って、題材選定の視点(別表)に立っておもしろいからという安易な考えに陥らないよう充分検討する。更に大切な観点として、これまで以上にものづくりを重視した題材選定に努めます。
イ)指導手引きの改定と職員研修
昨年2学期着手した手引きの改訂も概ね完了し、これに基づく研修を一層深めていくと共に、更に園庭の動植物と子供の関らせ方について研究します。
ウ)職員の野外研修会
自然を愛し、自然の不思議さ、偉大さに心打たれる教師でありたい。毎年1泊の観察会を来年度は秋田駒ケ岳で8月に行います。
エ)新たな施設
簡単な日時時計、太陽電池で動くもの、風車で動くものの開発
オ)科学遊びの生活化を図る施策
カ)家庭、地域との連携の推進
a. 保護者を対象とした科学マジックの講習
b. 地域の科学的研究や技術を持っている人を招いての実演交流の会
キ)小学校理科と科学遊びのつながりの研究
ク)幼保一貫教育をめざし、新設の附属保育園児の好奇心を育て、生きものと親しませる保育の研究。

4.おわりに

以上を地道に幸抱強く継続し、又一歩前進をめざして互いに言い聞かせながら今後も研究を重ねてまいります。